時空捜査局 事件簿
Time-Space Investigation Office Case Files
 

   








 月神の研究
(In search of Moon God)86




   片目のジャック
その14


     ○唇で罪を犯す

『ヨブ記』第2章710節





But he said unto her, Thou speakest as one of the foolish women speaketh. What? shall we receive good at the hand of God, and shall we not receive evil? In all this did not Job sin with his lips.

「だがかれはかの女に言った、『きみは愚かな女たちのひとりのように語る。なに、神の手の幸は受けるのに、災は受けない?』 このすべてにおいてヨブはその唇で罪を犯さなかった」

 ヨブは妻を愚かだと言っているのでなく、長年連れ添った妻が愚かではないと尊敬してからこのように諭しているのだろう。 かれは幸も災いもすべて神にゆだねるという姿勢をとっている。

 唇で罪を犯す、という行為は災いを与えた存在としての神を非難するということを指していて、ヨブは完璧なので非難しなかったが 一般人である妻はさんざん文句を言ったように思われる。それはきっと罪を犯したことになるのだろう。 宗教家にとってはそれは当然なのかもしれないが、自分に災い を与える存在を非難することは罪になるというのは考えさせられる。文学者には文学のテーマとして触発される問題である。 ヨブは『むすこたちが罪を犯し心の中で神を呪ったかもしれない』と思ったので朝早く起きて子供たちを清め 燔祭(いけにえを焼いて神に捧げる儀式)をずっと執り行っていたのである。それでも結局かれらは命を奪われてしまった。このあたりのことを考えると どうすれば良かったのかと混乱してしまう。

   (つづく)

 

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