時空捜査局 事件簿
Time-Space Investigation Office Case Files
 

   








 月神の研究
(In search of Moon God)80




   片目のジャック
その8


     ○主の問いかけ

 サタンが主の前にやってきたことから会話が始まる。 第1章7節から12節まではふたりだけの対話である。なぜかいっしょにいるはずの神の子たちは一言も口をはさまない。 サタンはかなり特別な存在らしい。

 英文を示して日本語に訳してゆく。

 第1章7節
 And the LORD said unto Satan, Whence comest thou? Then Satan answered the LORD, and said, From going to and fro in the earth, and from walking up and down in it.
「そこで主は『おまえはどこからやってきた』とたずね、サタンは『地を巡りめぐってあちこち歩きまわって来ました』と答えた」

 なにか、主はサタンがやってきたことを喜んでいるようだ。サタンは地を巡回して見回るのがかれの役目であるようである。

  第1章8節
And the LORD said unto Satan, Hast thou considered my servant Job, that [there is] none like him in the earth, a perfect and an upright man, one that feareth God, and escheweth evil?
「主はサタンに『この地に神を恐れ悪を避ける完璧で正しいわたしのしもべヨブほどの者がいないと気づいたか』」といった」

 この文章には主語の LORD(主)すなわちヤハウエとGod(神)すなわちエロヒームという概念が共存している。これは別々の存在なのだろうか。 LORD(主)はすべての元となる創造主であり、God(神)とは太陽神であったり世界を統治するために創造主のとるざまさまな姿と考えられる。 ここではその神を恐れることが崇敬することと同義で重要視されている。

 それにしても「あいつの素晴らしさにおまえは気づいたか」というような問いかけは反発が予想される。そんなふうに 訊かれればサタンでなくとも思わず「なにが素晴らしいものですか」と言いたくなる。

 当然、主はそれを予期していてこのように問いかけたのであろう。

 第1章9節
Then Satan answered the LORD, and said, Doth Job fear God for nought?
「サタンは主に答えた、『ヨブはなにもないのに神を恐れるでしょうか」

 と案の定、サタンはのせられる。

 第1章10節
Hast not thou made an hedge about him, and about his house, and about all that he hath on every side? thou hast blessed the work of his hands, and his substance is increased in the land.
「『あなたはかれと家とすべての物を、 垣で囲んだではありませんか。あなたがかれの仕事に恵みを与えたので、財産が地にふえたのです」

 サタンはちゃんとヨブの生活を巡回して視察してきているらしい。その上で ヨブを評価してどうもかれの成功は主の庇護によるもので実力ではないと思ったようだ。 サタンはヨブが過保護にひいきされ自立していないといっているのである。

第1章11節
But put forth thine hand now, and touch all that he hath, and he will curse thee to thy face.
「しかし今あなたの手を伸ばしてかれのすべての物を取り上げてごらんなさい。そうすればかれはあなたの顔に向かってのろうでしょう』」

 たしかにヨブを本当に評価するには与えすぎた物を取り上げてみなければできないように思われる。「 のろう」というのは「恐れる」の反対の行為なのだろう。

第1章12節
And the LORD said unto Satan, Behold, all that he hath [is] in thy power; only upon himself put not forth thine hand. So Satan went forth from the presence of the LORD.
「主はサタンに言った、『よし、かれのすべての持ち物をおまえにまかせよう。ただしかれ自身には手をつけるなよ』。それでサタンは主の前から退出した」

 サタンがつまらないことを言い出したからにみえて結局、すべては主の意志によってヨブの再評価が行われることになったわけである。 サタンは主の指図のままに働くことになる。 ヨブ自身には危害を与えないという限度を守り財産資産その他を除いたあとヨブを評価するのである。

 (つづく)

 

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