ホウレンソウの女王 　　　　
　 時空捜査局 事件簿
Time-Space Investigation Office Case Files
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　月神の研究
（Ｉｎ　ｓｅａｒｃｈ　ｏｆ　Ｍｏｏｎ　Ｇｏｄ）６４



　 緋色の女救出作戦
その１０


　　 　 ○ホウレンソウの女王
　
　 　それが邪馬台国第二代女王の住処であるとわかる者の到来を期待して かの女は石神の稲荷神社でご自分の名前「豊波」を前面に出した「禮菠社」という表札を掲げて今日までじっと待っておられたのだ。 はたしてどれほどの時が流れたことか。ずいぶん待ちくたびれたことだろう。

　波に草冠をかぶった菠という見慣れない字を調べると それはホウレンソウのことで漢字表記が菠薐草で菠薐とは中国語でペルシャあるいは西南アジアのどこかの国のことという。 ホウレンソウには「豊葉」という有名な品種もあった。なるほど「豊波」さんに通じる名前に思える。

　そして羊羹を緑色に色づけするときホウレンソウの色素を使うという。 かの女は色彩に対して関心が深かったらしく 織物や染め物の神として緋と藍だけでなく緑も使用するのだ。 やっと懸案だった緑とのゆかりが見つかった。

　古代の女性枢軸時代のリーダーとして活躍した緋色の女はここでは赤ではなく緑のおしろいを塗って準備していたのである。 すべての封印が解かれつながれていた鎖から放たれる時、われらの時代は波立つだろう。 そう「波」は立つのだ。

（つづく）

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