卑弥呼、その死 　　　　
　 時空捜査局 事件簿
Time-Space Investigation Office Case Files
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　月神の研究
（Ｉｎ　ｓｅａｒｃｈ　ｏｆ　Ｍｏｏｎ　Ｇｏｄ）５８



　 緋色の女救出作戦
その４


　　 　 ○卑弥呼、その死

　倭人伝のヒミコの死から終わりまでを読んでみる。

　　　　　　『三国志、魏志倭人伝、東夷の条』原文、
「其八年、太守王到官。
倭女王卑彌呼與狗奴國男王卑彌弓呼素不和、遣倭載斯烏越等詣郡説相攻撃状。
遣塞曹掾史張政等因齎詔書黄幢、拜假難升米爲檄告喩之。
卑彌呼以死、大作冢、徑百餘歩、葬者奴婢百餘人。
更立男王、國中不服、更相誅殺、當時殺千餘人。復立卑彌呼宗女臺與、年十三爲王、國中遂定。政等以檄告喩臺與。
臺與遣倭大夫率善中郎將掖邪狗等二十人送政等還、因詣臺、獻上男女生口三十人、貢白珠五千孔・青大句珠二枚・異文雜錦二十匹。」


　意訳
「其八年に、太守である王（おうき）が官になった。 倭の女王の卑彌呼は、狗奴國の男王の卑彌弓呼（ひみくこ）ともともと仲が悪く、倭の載斯（さいし）烏越（うおつ）等を派遣して互いに攻撃しあっていることを報せた。
それで塞曹（さいそう）という役所の部下の張政（ちょうせい）等を派遣して、詔書や黄幢という魏の正規軍の黄色い旗を 難升米（なんしょうめい）という人に与えて、争いをやめるように諭させようとした。
卑彌呼は亡くなって径百歩以上という大きな墓が建てられ奴婢百人余りが殉葬された。
それから男王を擁立しようとしたが殺し合いになって千人以上が殺された。 それでふたたび卑彌呼の宗女にあたる十三歳の臺與（とよ）を立てるとやっと治まった。 政等は檄（ふれぶみ）で臺與に教え諭した。
臺與は倭の大夫で率善中郎將の掖邪狗（えきやく）等二十人を派遣して政等を送り還らせ、 魏の都で男女の使用人三十人、白珠五千孔、青大句珠二枚と異文雜錦二十匹を貢いだ。」

　　　 　この 「爲檄告喩之。卑彌呼以死。」 という文章の読み方でヒミコが殺されたという説がある。「以」を原因の結果を示す語とみて「爲檄告喩之」の結果 ヒミコが死んだという。すなわち長政が告諭した結果ヒミコが死んだというのだ。しかしその場合は 「爲檄告喩之。以卑彌呼死。」という語順にしなければならない。
「以」を通用字である「已（すでに）と読んで「卑弥呼は已に死す」ということで 張政は来日した時、すでに卑弥呼は亡くなっていて会えなかったとする説もあって 古代史ファンの間には様々な憶測が飛び交っている。簡単そうでもなかなか単純ではない。

　わたしはわたしなりの読み方で「緋色の女」はヒミコという自分なりの結論に飛びつこうとしたのだが、 それはやはり安易すぎた。 　別にかの女は歴史の闇に葬られているというわけではない。ヒミコは本人が意図したわけではなくとも日向のトーテムとなり、 天照大神、日本の皇祖最高神、と崇められている。

　この近くに解けない封印に苦しむ本当の依頼人が待っているはずだ。

　　　（つづく）

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