月神の研究 （Ｉｎ　ｓｅａｒｃｈ　ｏｆ　Ｍｏｏｎ　Ｇｏｄ）９8

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片目のジャック

その２５

　　 　 ○長い旅

　振り返れば１９９５年８月４日金曜日に弁天さまに百日詣りを始めて三ヶ月後の １１月１１日土曜日の朝に完了した。そしてその日の午後、 １９９５年１１月１１日１３時１８分に「炎で書いた物語」番外編を初アップロードしたのだった。その「炎で書いた物語」は９８回で終わり、この「月神の研究」も９８回まで 行き着いた。合わせて９年間、１９６回かかってここまでやってきた。

　思えば、ずいぶん長い時が経過したものである。 その間に父母や親しい友たちは鬼籍に入り、パソコンは３代目になり、留学した息子は卒業後、 アメリカでシュワちゃんの治める加州の州民として生活している。

○广の封印

　片目のジャックの依頼を受けてサタンの正当評価をするために調査を続けて サナート・クマラというほとんどの人に馴染みのない名前に隠れて活動するニギハヤヒの一族が サタンとして貶められ、いわれのない嫌悪の対象になっていることに気づかされると日本の神社の お札におよそ似つかわしくない悪魔という文字の入っている玉置神社の神札が気になってきた。

　　　
　左の図は弓神楽の歌詞「熊野成(なる)玉置の宮の弓神楽(かぐら)弦(つる)音須(す)礼(れ)波(ば) 悪魔退(しりぞ)久(く)」と書かれているというが、実際には 「熊野なる」ではなく矢的(ヤマト)成(ナル)であってあとは 「成、音、波、胎、退久、弓神楽」と祭神のニギハヤヒの様々な象徴が描き込まれて並んでいる。

　そうすると悪广と縦書きされているのもサタンとして下天したかれのことと思える。 しかし悪魔は西洋の宗教の概念のようでここに書き込まれているのにはなにか異和感を覚える。 なぜそれを悪魔ではなく悪广としてあるのか。中身の木木と鬼が抜いてある。 これはただのマダレでしかない。 これでも本当に悪魔と読むのだろうか。 これまでだれも不思議に思わなかったのだろうか。 わが捜査局としてはこういう疑問が常に解決の糸口となるのである。

　大修舘新漢和辞典三訂版で「广」をひいてみよう。魔の意味があるのだろうか。

　广　ゲン
１、いえ。がけの上に高く作った家。 ２、むなぎ 解字、指事。厂はがけを、厂の上の「、」は屋根を示し、がけの上に 高くかまえた家を表す。


　やはりどこにも魔の意味は見当たらない。

　ところがこの「广」は現代の中国語では （エン）低くゆっくり発音する上声のｙａｎ
と発音されているのだ。

　その意味は

１、玉を磨いて光をだす。 玉を削って上端をとがらす。また、その玉。 圭（エンケイ）。 ３，美玉の名。４、 は、光沢のあるさま。


　こうして得た結論は「广」とは、 玉置神社にふさわしく玉のことであったのである。

　やっとわかったかと广の中身のホホロ鬼が笑っているようだ。 このお札を開く方向に左回転に読んでゆけば「玉置宮」が「闇奥玉」となる。 ここは本当にニギハヤヒの广（ ）が置かれている神社である。　

　この「广」の封印が解けた今、中の玉の輝きが世の中を隅々まで照らすだろう。

（つづく）

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