時空捜査局
事件簿
Time-Space Investigation Office Case Files
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月神の研究
（Ｉｎ ｓｅａｒｃｈ ｏｆ Ｍｏｏｎ Ｇｏｄ）９１
片目のジャック
その１８
○友たち
ヨブの物質的な豊かさは最初の受難で消え、次に肉体的な健やかさも消えて、残るは神に忠実で正しい者であるという精神的な誇りだけになった。 最愛の妻からの辛辣なことばはかなりダメージを与えただろうがヨブは必死にその誇りを最後の拠り所として生きながらえているようだ。 それではと仕掛ける側はかれの友人たちを送ることになる。
これまで超人的な克己心で耐え続けたヨブも同情してくれる友人たちの前では 「わたしの生れた日は滅びよ。」と生まれてこなければ良かったという意味の愚痴を言う。 ところが理解者であるはずの友たちは、神が非のない者をこのような目に遭わせるわけがないとつぎつぎにヨブに悔い改めを迫る。 ヨブを正しい者であると友が認めてくれないのだ。ヨブの最後の拠り所であった誇りも傷つき虚しい論争が長々と続いて精神的にも追い込まれる。
そしてヨブはついに「なぜわたしと争われるかをお教えください」と神に対して尋ねる。 なにがあってもただひれ伏し崇め拝するだけであった神に対して質問するほどに自我が発達したようだ。 そうでないと将来神の子集会に出席できない。他の神の子たちもそれぞれに大変な試練を経て主と語り合えるほどになったのだろうから。
○主の計画
まだ続く友人たちのヨブに対する糾弾をさえぎって主がつむじ風の中からヨブに答える。 「無知の言葉で、神の経綸をはかどらなくする者はだれだ」と。 すべてが神の計画の一部であることがここで明かされたのである。 その計画の内容には触れず 主は自身の万物の創造や運営統治の苦労を語る。 それはやっと成長したと見届けたヨブに対する餞（はなむけ）のようである。
これはヨブという義人ひとりのことではなくかれは全人類の象徴なのだ。 自立とは直面する初めてのことの連続に自分自身で対処して責任をとることで生やさしいことではない。 人類は苦難を通して成長し自立してゆくのだろう。 この一風変わった物語が旧約聖書に収録された目的は神のその計画を読みとらせることであった。
（つづく）
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