時空捜査局
事件簿
Time-Space Investigation Office Case Files
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月神の研究
（Ｉｎ ｓｅａｒｃｈ ｏｆ Ｍｏｏｎ Ｇｏｄ）５５
緋色
の女救出作戦
その１
○緋色の女監禁事件
この「月神の研究」シリーズも黄金太陽についての記述で
やっとすべて片づいたか、と一安心していた。
ところがそうはゆかなかったようだ。 新たなクライアントがわたしの心の扉をノックしてアクセスしてきたのである。
そのクライアントは本名は明かさず「緋色の女」と呼ばれている、とハンドルネームを名乗る。 かの女はまだ封印が解けず鎖につながれたままで苦しいという。
一体、このクライアントはだれなのか。鎖につながれているとは穏やかではない。 これは監禁事件のようだ。
どこかの変質者に捕えられているのかもしれない。
わたしが「緋色の女」で思い当たるのは『風とともに去りぬ』の主人公の名前、スカーレット・オハラぐらいしかない。 しかしそんな小説中の人物がアクセスしてくるはずがない。
他に緋色で思い出すのはシャーロック・ホームズの第一の事件『緋色の研究』で、 作者のコナン・ドイルは霊との交流ができると考えていて降霊会が好きだった面白い人だが、 かといってあの作品にも関係があるとは思えない。
手がかりが「緋色の女」という通称だけではあまりにも漠然としすぎていて砂漠で落とした一粒の砂を捜すようなものだ。
シャーロック・ホームズなら解決できるだろうか。作者が自由に虚構を重ねて都合のいい結末に導く小説なら簡単だろうが、 とにもかくにもこのシリーズは過去に実際に起きて時空の闇に隠された事件を扱うのである。そこに大きな差がある。
とはいえ、いくら砂漠でも砂を落とした時間と場所がわかれば見つかる可能性はある。 事件の時代と場所を特定できれば「緋色の女」の正体も垣間見えるかもしれない。
わざわざ大変な思いをしてこの時空をかいくぐってきたクライアントを手ぶらで帰すわけにはゆかない。 なんとか全力をあげて捜査してみよう。
（つづく）
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